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ギャ句゛は点化句法 [あいだ詩学]

夏井いつき『子規を「ギャ句゛」る』(光文社新書、2020)を読んで驚いた。
ギャ句゛とは、もとの句を少しだけ変えてみる句法のことらしいが、夏井さんは、どうやらこの句法が新しいものと思い込んでいるらしいのだ。同書の「はじめに」で「ギャ句゛は、俳人杉山久子を宗匠として始まった。…(中略)…日本ギャ句゛協会会長を自称し始めたのが、ワタクシ夏井いつき」と明言しているからである。
いやはやトンデモないこと。人気番組プレバトでもお馴染みの夏井さんともあろうお方が、点化句法のことをご存じないとは!
点化句法については、すでにこのブログの「点化句法を超絶短詩にしてみれば」(2010年7月27日)で記しておいた。
https://mabusabi.blog.ss-blog.jp/2010-07-26

同ブログ頁から、めぼしいところを下に引く。

楠元六男『芭蕉、その後』(竹林舎、2006)によって、点化句法のことを知りました。
元のものから少し変えるだけで、趣をがらりと変えてしまう手法のことです。

やみの夜は松原ばかり月夜かな (作者不明)
闇の夜は吉原ばかり月夜哉 (其角)

前句の「松」を「吉」に変えることで、其角はまるで趣の違うものを作り出しています。
前句で、松原は闇のように暗いのですが、後句で吉原は月のように明るいのです。
なぜかはわかりますね。。。
同書によると、其角は、芭蕉と共有していたこの句法を徹底させていったとのことです。
同じ楠元の『江戸の俳壇革命』(角川学芸出版)も読み合わせると、この句法は、水間沾徳へと受けつがれ、さらに広まっていったようです。
点化句法のことを知ったおかげで、わたしくめの『ほう賽句集』(七月堂、2008)でやろうとしたことが、よりはっきりとしてきたように思いますし、おまけに、点化句法は超絶短詩にもどこか通じるところがあるように思います。
いろいろ知らないことがあるものです。

以上のとおり、およそ10年前にワタシはブログに記した。そこに引いた拙句集『ほう賽句集』は、尾崎放哉の句を、点化句法で換骨奪胎したものだ。夏井さん的に言うなら、ギャ句゛ったのである。
ただ、かくいうワタシも、同句集をまとめた段階では、点化句法のことを知らず、本歌取りならぬ本句取り、などと同句集あとがきに記していた。したがって、自戒の念を込めて、同ブログを綴ったのである。
われながら自戒の念は続いたようで、拙著『差異の王国 ― 美学講義』(晃洋書房、2013)でも、点化句法に触れておいた。
誤解しないでほしいが、ワタシはギャ句゛の試み自体は喝采を送りたいほど、共感を覚えている。別に自慢するには値しまいが、ワタシ自身もダジャレ(すれすれ)詩人という冷笑の中、詩作してきたからだ。ただ、日本文学の奥行きを知ってほしいのである。そういった思いから、ここにめずらしく長文をブログに綴った次第だ。
 





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